25年前の悲しい出来事に心を向ける


ずっと読みたいと思っていた本を

やっと借りることができました。


◯彩花へ「生きる力」をありがとう


この本は25年前、

神戸の少年事件で犠牲となった

山下彩花さんのお母さんが綴ったものです。


なぜこの本を読もうと思ったのか

きっかけは覚えていません。

本を読み進めてわかったことなのですが

この犠牲者である山下彩花さんは

私と同じ昭和61年生まれでした。

生きていれば私と同じ年齢です。

そして事件が起こったのが平成9年。

彼女が小学4年生のときでした。

私には今同い年になる娘がいます。

山下彩花さんと同い年であり

山下京子さんと同じ

小学4年生の子どもを持つ私。

このタイミングでこの本を手に取ったことに

何も感じないはずはありませんでした。


この事件のことは

ぼんやりとしか覚えていません。

当時、自身が小学生だった事もあり

衝撃的すぎて

記憶から削除したいと

思っていたのかもしれませんし

あまりに残忍な事件だったため

私の母がニュースを見せなかったのかもしれません。


まさか25年後、

この本を手に取るとは思ってもみませんでした。

娘の立場で母親に向けて読む自分。

母の立場で娘に向けて読む自分。

両方の立場にたって、読み進めました。


私は子どもと関わる仕事をしていますので

このような悲しい事件に出会うたびに

自分にできることはないかと自分に問いかけます。

加害者である少年も

乳児期があり、子ども時代があった。

その子ども時代に

良い人に一人でも巡り合っていたら

現実は変わっていたのではないかと

思わずにはいられない。


この

加害者、被害者、犠牲者という言葉も

使っていながら、読んでいながらとても気になります。

震災ならばわかります。

被害者、犠牲者と表現すること。

ですがこれは人災。

加害者となってしまった少年の背景には

社会に傷つけられていた部分があるかもしれない。

そう考えると、彼もまた被害者なのです。

そして命を奪われた側を被害者、犠牲者という言葉のみで表現するには足りなすぎる。

うまく説明できませんが。。。



私は継続的な支援の必要性を強く感じています。

家庭に深く介入できる乳幼児期。

保育園や幼稚園が異変を察知しサポートできるのは

園に在籍している間だけ。

卒園してしまえば何もできなくなる。

けれども卒園しても

彼らの生は続いていく。

なぜケアが必要とわかっていながら

手を切ってしまうのか。

卒業式で

「羽ばたいていってください。」

という言葉は何度も聞いたものの

「困ったことがあったら、悩み事があったら、いつでも頼っておいで。」

と言ってくれる先生は、学校は

どこにもなかった。

あんなに人生に深く関わっておきながら

卒業してしまったらそれでおしまい。

その子が生きる力を身につけていようがいまいが

困ることに出逢おうが

自分でどうにかしなさいの自己責任論。

気になる子がいたところで

「元気にやってるかなぁ。」

と思いを募らせることしかできないなんて

おかしいです。


だから私は

卒園を間近に控え

新しい生活にドキドキしている子どもたちに

必ずと言っていいほど

「卒園だからさようなら、ではないんだよ。小学校に行っても、中学校に行っても、いつでもあそびにきていいんだからね。困ったこと、悩みごとだけじゃなくて嬉しいこと、誰かに話したいなぁと思ったことがあったらいつでもおいで。けれど、約束が一つ。お母さんに必ず言付けをしてから遊びに来ること。そしてできれば園に連絡を入れること。来る予定がわかっていたら会いたい人が待っててくれるかもしれないからね。」

とコッソリ話をします。

そう言って

実際に来る子はいません。

ですがきっと

頭の片隅に

何かあったらいつでも頼っていいという場所が

あるのとないのとでは

安心感がぜんぜん違います。


その子の人生の数年に

どっぷり介入するわけですから

卒園したからとおしまい、

では無責任すぎるわけです。

在籍中は手厚くサポートできたとしても

卒園してからは何もできない。

ならば自分にできることは何か。

それは在籍中に誠心誠意向き合い

信じ会える大人に出会うことができたと

思ってもらえること。

人生にたった一人でもいい

たった一瞬でもいい

自分に心を向けてくれた人がいた

という体験をしてもらいたいのです。


願わくば

生涯を通じてサポートできる体制が

整えられますように。


この本と一緒に

元少年Aが綴った絶歌も借りようとしました。

データ上では貸し出し可なのに

いくら探してもみつからない。

カウンターに持っていったら

まさかの貸し出し中で7月になると言われました。

彩花ちゃんが、京子さんが

一緒に借りて欲しくなったのかな、

とさえ思ってしまいます。


ちょうど読み終えた頃に

心が落ち着いた頃に

読むことができそうです。


本人の気持ちは

本人たちしかわからない。

だから私は

山下京子さんの本も

元少年Aの本も

どちらも読みたい。

読んだところで

当人たちの気持ちがわかるわけはない。

私とは違う人間だから

感じ方も考え方も全く違う。

でも、気持ちに近づくことはできる。

だから、読みたい。


そう思います。