ねこのおばさん

 

 

学童の帰りに

いつも出会うおばさんがいる。

そのおばさんは

野良猫に好かれているようで

いつも足に野良猫がまとわりついている。

おばさんもまんざらでもなく

ニコニコしながら毎日餌をやっている。

 

学童の帰りに見かけるものだから

太郎と私もすれ違うのが習慣化していて

「ねこのおばさん、きょうもエサやってたね。」

「ねこのおばさん、ねこが好きなら飼えばいいのに。」

など会話をすることが増え

いつの日からか

そのおばさんのことを

「ねこのおばさん」

と、2人で呼ぶようになっていた。

 

ある日、いつものように学童に迎えに行くと

変わらずねこのおばさんが猫に餌をやっていた。

太郎が学童から飛び出してくると

びっくりしたのか

ネコが走り去ってしまい

1人取り残されたねこのおばさん。

太郎と手をつなぎ

いつも通りすれ違うと

大きな声で

「今日はねこのおばさんいないね。」

と言う太郎。

 

ん?

間違いなく今すれ違ったのだが

ねこがそばに居ないもんだから

まさかイコールでつながってない…?

 

そのおばさんもまさか自分が

ねこのおばさんと呼ばれているなんて

今まで知らなかっただろうけれど

今の今まで野良猫に餌をやっていたのは

紛れもなくワタシ…

もしかして…ねこのおばさんてワタシのこと?

って察したよね?!

むしろ太郎ではなく

おばさんの方が

ネコのおばさん=自分と

イコールで繋がったよネ!!

 

気まずい。

太郎の大声が

ねこのおばさんに聞こえていないはずがない。

 

どう誤魔化す?((((;゚Д゚))

この気まずい雰囲気、どうしてくれよう…

 

咄嗟のことで

思わず私の口から出た言葉はなんと

「ホントかな…いないかな。。。」

でした。

 

ホントかな・・・・(°_°)

 

いないかな・・・・(°_°)

 

・・・・・・・・・(°_°)

 

ちーん・・・・・_| ̄|○

 

やっちまった…

よりによって

ホントかな…とか

一番選んじゃいけないワードじゃん!!(つД`)

 

 

居ないように見えて実はいるとか

これじゃあまるで怖い話じゃないか!

ホラーだよホラー!

だってさホントに目の前にいたんだもん!

いや気づいてないかもしんないけどさ!

いたんだって!!

 

どうにもこうにもごまかせず

まごついてる母を横目に

さらに追い討ちをかけるように

「ホントにいないでしょ。おばさんはいたけど。」

と太郎。

それがねこのおばさんだって!

要のねこはあなたのせいでいなくなっちゃったの!

っていうかおばさん呼びをやめい!

いや、おばさんなんだけどさ!

本人おばさんだと思ってないかもしれないじゃん!

 

ずいぶん遠ざかってから

「さっきのはネコのおばさんなんだよ!」

「あなたがいきなり飛び出してきたから猫がびっくりしていなくなったのよ!」

と説明すると

「え?そうなの?」

 

やはり悪意はありませんでした。

 

「おばさんに向かっておばさんて言わずとしてなんて表現したらいいのかしら…奥様?」

「小学生の口から奥様も変か…お母さん?」

と私が頭を悩ませていると

「いやお母さんて。あなたあの人から生まれてないでしょ。女の人?じゃない?」

と突っ込みながら

的確な言葉のチョイスを導き出す太郎。

 

いいねぇ、女の人。

 

ねこのおばさんは

ネコの女の人になりました。

 

っていうか

今更なんですけどね(´・ω・`)

 

時を戻したいっ…!!!